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EU経済帝国を考える(4):R&Dモデル

By Hiroki Kamata | 2008年 7月 30日

2000年をほぼ境として、米国、日本、EUはITへの研究開発を強化した。しかし、“ITバブル”の影響もあり、日本はほとんど戦略についての議論をしなかったように思う。なぜ、何のためにITに注力するのか、どのような技術を優先し、成果を何をもって評価すべきか、開発はどのように進め、成果はどう共有したらよいか…そのへんが甘いので、5年以上を経た現在、成果を検証しつつ、21世紀の戦略を固めていく作業がなかなかできない。継続性も弱いので、ただでさえ稀少な人材・資金を無駄にしてしまう。「次のブーム」を待つ方法は通用しないのだ。

他方でEUは、2000年にリスボンで開催された欧州評議会(Council of Europe)での合意に基づき、e-Europe Action Planおよび「成長と雇用のための欧州情報社会イニシアティブ」と副題された “i2010″ (2005)において、IT重視の意味を明確化し、戦略を定義している。言うまでもないが、戦略とは、①競争相手がいて、②資源が分散し、あるいは不足している、③ステークホルダーの間で、目標と戦術に関する合意が必要、といった状況で必要になるものである。各国の「戦略」を集めて調整していたら、EUの戦略など出来ない。だから、「ITが必要なのは自明」とせずに、「なぜ必要なのか」から徹底して議論した。またITによって「人々の生活がどう変わるか」という受身の発想ではなく、逆に「雇用の質と量を拡大し、社会的な結束を高められるように」するために、と社会的な目標を明確にした上で、「持続的成長を実現する競争力のある活力ある知識経済の基盤をなす技術開発」に、EUと加盟国、企業、教育・研究機関などが一致して取組むべきテーマを明示している。ITはふつうの人々の生活のためにある、ということだ。

ここには前提を排除して、ゼロから構築した説得力がある。こういう文書は「能書き」の羅列だと考える人にも、がまんして読んで欲しいほどだ。EUが帝国として機能し始めたのは、中欧などの“途上国”出身の“EU至上主義”エリートがブリュッセル官僚として力を持ち出した成果であると言われるが、納得できる内容だ。

EUの研究開発支援は、ITを非常に重視しているが、それは単に成長分野というだけでなく、21世紀の産業技術全体の高度化を支える基盤技術であると考えるためである。いくつか特徴をあげれば、

 ①欧州の製造業の競争力維持・強化を最重視
 ②テーマ群ごとの凝集力、テーマ群間の協調を重視
 ③米国の主要ハイテク大学と競合可能な、バーチャルなNoEの構築・育成を重視
 ④プロジェクト間の連携と継続性を考慮
 ⑤補助金事業に民間プロジェクトを連携させる柔軟さ(市場化を意識)

といったことが目立つ。米国の研究開発力は圧倒的に強いが、スポンサーとして過度に軍に依存しているのが問題で、製造分野では民生転用に時間がかかってしまうだろう。米国の大学や企業は機密保持に縛られるのに対して、EU企業は民間航空や自動車、交通技術、家電などに、すぐに応用することができるからだ。EUが超国家的存在であることは、研究開発管理さえ有効に機能すれば、米国以下の技術成果しか得られなかったとしても、市場化においてそれ以上のパフォーマンスを発揮する可能性があるということである。

    * NoE:Network of Excellence

Topics: 政治・経済・ビジネス, 現代世界論 | No Comments »

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