カテゴリー

最近の投稿

ブログロール

情報の“砂漠化”は止められるか

By Hiroki Kamata | 8 月 6, 2008

「日本では、例えば大きな書店に行っても、書棚にある一番難しい本ですらその分野の入門レベルでしかありません。」(IPA認定の史上最年少「天才プログラマー」上野康平君のコメント

これは昨日や今日のことではないのだが、状況はますますひどくなってきている。砂漠化が進行しているのだ。専門書の印刷部数が減ると単価が上がり、発行点数も減る。すると読者が育たないから、平均的知識レベルが下がる。すると入門書ばかりになる。ますます専門書などは出なくなる。あらゆる専門技術分野の中で、プロが最も専門書を読まないのがITということになるだろう。最も変化が激しく、先端技術が必要とされる領域と考えられているにもかかわらず、である。医学書のコーナーに『1週間でできる脳外科手術』とかが置いてあればゾッとするだろうが、IT書コーナーにはそんな本ばかりだ。

いまはインターネットで最新の情報は入るので、本は買う必要はないという…というのが“砂漠化”への適応の結果だ。正気で考えて、ネットからタダで入手できるIT関連日本語情報の圧倒的部分は、①ベンダーが読ませたいと考えている情報か、②研究論文あるいはノート、③広告を集めたいメディアが提供する情報(基本的に入門レベル)、④OSSなどのフォーラム、⑤グループや個人の寄稿(翻訳を含む)、⑥雑談的情報、で占められる。英語環境との質量の違いは、圧倒的である。ネットが普及して、むしろ内外情報格差が急拡大している。この格差の最大の害毒は、人々からむしろ情報への飢餓感さえ奪ってしまい、ますます内向きにさせることだろう。日米間(というより日本とそれ以外)でテーマの共有さえきちんと出来なくなっている分野も少なくない。

ほんとの専門家は英語の情報をナマで読むからいい…というのが、“砂漠化”への適応のもう一つの結果だ。確かにそうした面もある。しかしそれでは、そうした国際レベルのエキスパートは意思決定で主要な役割を果たしているだろうか? 彼らは英語を読まない経営者や一般の技術者とのコミュニケーションで不自由を感じないだろうか? むしろますます孤立化しているのが実際ではないか? 人材は、世界の第一線に流出するか、動機と意欲を喪失するか、それとも「オタク」化するしかないだろう。ITにおける砂漠化の被害は、典型的「内需産業」であるITビジネスに留まらない。他産業の競争力を損なうこと著しいだろう。IT砂漠を緑化しないと、日本全体が砂漠化されることになる。

国や民間が金を出してでも、欧米の専門情報の大規模な翻訳プロジェクトを開始すべきではないだろうか。中国では英語を自由に読める連中が、翻訳で次の世代を育てている。インドではもともと多くが英語で苦労しないのだ。情報に金を出さない者は、情報で金を取れなくなるだろう。情報で金を取れなくなれば、モノでも金を取れなくなるだろう。モノは情報の塊だからだ。

Topics: テクノロジーとビジネス, 近時片々(時論), 電子ブック |

採点をお願いします。


コメントはこちらへ