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データが人間化される時

By Hiroki Kamata | 2008年 9月 11日

NBOnlineに「社員をモノ同然に数値化する時-統制社会のにおいが漂う社員管理方法」(9/8/08)という、やや煽情的なタイトルの記事が翻訳掲載されている。原文はNumeratiという話題の本の著者スティーブン・ベーカー(BusinessWeek誌シニアライター)が自著を解説した同誌最新号の記事。原題は“Book Exerpt: The Numerati”とそっけない。ちなみにNumeratiとは、”numeracy”(数量思考)と接尾語の”-rati”(…階級、人)を結びつけた造語のようだ。さすがというか、記事は面白いし、本も読んでみたくなった。

サービス化が進行すると「労働力こそ最大の商品」ということになってくる。もちろん、マルクスが150年前に言ったとおり、資本主義では「労働力」が交換可能な商品として取引きされているわけだが、Numeratiは邦題のように、すでに商品(=数値)化された労働力を、モノとして管理するといったレベルのもの(どこでもやっている)ではなく、高度な数学モデルを使い、スタッフのスキルや個人的志向、チーム能力といった数値化されにくいものから可能な限り包括的で有効な情報を引き出し、プロジェクトへの要員設定を企業として最も効率的・効果的なものにしていこうというものだ。IT用語を使えば、データマイニング、ビジネスインテリジェンスのアプリケーションである。

人事データベースが、いわば2次元的情報(能力/経験)であったとすれば、Numeratiはさらに、性格や相性、交遊関係、隠れた性向などの人間的要素までを、電子メールを含むあらゆる利用可能な情報源を使って解析することで、最も無駄が多そうな人事の世界を変えようとしているわけだ。サービス化が最も進んだIBMでは、5万人もコンサルタントの能力・適性モデルを管理し、オペレーション解析の手法で彼らの配置を最適化している。つまり使えているわけだ。数量化は人間を単純にモデル化するのではなく、むしろ数学によってモデルを人間化しようとしている点がすごい。

米軍では、スタッフのスキルモデルを高度化することで、部隊編成や作戦配置を最適化している。スキルモデルの開発には膨大な予算がつけられており、たぶんIBMも受注しているのだろう。数学モデルの高度利用は、BPM/BRMを使ったバリューチェーンの最適化などでも行われているが、「ミッシングリンク」は人間のモデル化、要員設定の最適化であった。Numeratiはシステム工学の新しい段階を告げるものと言えそうだ。

個人的感想。ついにフィリップ・K・ディックテリー・ギリアムの悪夢のSF世界が到来したようだ。この技術は、愚かな人間によって、愚かなことにより多く使われることは間違いない。ハンニバル・レクター博士は、彼を「量化」しようという人間に(文字通り)食いついていた。量化に抵抗したい人間はどうするのだろう。

Topics: 書評(本・新聞・ブログ), 近時片々(時論) | No Comments »

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