無償インターネットは米国を救うか?
By admin | 2008年 12月 6日
ポスト市場主義の情報産業政策
市場主義が多くの人々の信仰を集めていたころ、政府の計画や支援は不要であり、イノベーションや成長は、すべて市場から生まれると考えられていた。クリントンーゴア政権は、Information Superhighwayを提唱し、National Inrormation Infrastructure (NII)を構想したが、必要な予算も業界の支持も得られず、頓挫した。ブッシュ政権は、市場に頼りながら2007年までにブロードバンドを全米に普及させる、と約束したが、結果的には米国のネットワーク環境は、(アクセスと容量で)先進国中最も貧弱と言われる状態に陥っている *。インターネット上で、あれほど創造的、革新的なサービスを産み出し続けているのとは対照的だ。
市場への信仰は、計画への信仰と同様に、根拠はない。サッカーのシフト(3バック/4バック)のようなもので、結果とは無関係だ。市場は確かにイノベーションと成長を生み出す<ことがある>。ただそれは「競争的動機と環境」が存在している場合だ。市場の参加主体は「利益と安定」を求めているのであって、出来れば競争などしたくはないし、ずっと続けてきた仕事のやり方も変えたくない。特に日本では。だから、多くは競争回避的な行動をとり、独占による安定が継続する。競争したいのも人間の本性なら、したくないもの本性だ。過去30年間で、日本の経済界のキープレーヤーはほとんど変化がない(ソフトバンクくらいか)。
圧倒的な情報サービス、貧弱な通信サービス
米国の場合、競争によるイノベーションは、もっぱら情報サイドで生まれ、通信サイドでは生まれなかった。これは通信が鉄道や道路のようなモビリティインフラであることを考えると当然だろう。米国のブロードバンドは電話会社が提供し、競争はほとんどない。電話会社は独占に安住し、サービスの向上への動機がない。情報などには関心を持たない。むしろ、この競争=成長市場への支配の欲求を持たなかったことが、インターネット・サービスの興隆を生んだとも考えられる。日本とは逆だ。吉凶はあざなえる縄の如し。しかし、米国のIT産業のこれ以上の発展が、ブロードバンドの普及にかかっていることは衆目の一致するところだ。
そしてオバマである。Web 2.0/3.0時代のインターネット政策が求められている。ブラウザと電子メール、初歩的なビデオダウンロード以上のもの、つまり、対話型アプリケーション、ユーザーによるビデオの投稿と共有、高品質ビデオサービスを実現する通信環境を広汎に提供するものである。これらは、次世代の通信、医療、教育、放送、娯楽、オフィスおよびホームオートメーションのベースとなる。経済界で最もオバマに近いGoogleのエリック・シュミットは、インターネット・インフラへの投資こそ経済全体への乗数効果を持つと主張している。
無償インターネット構想
新たな動きは、すでに始まっている。通信政策を所管するFCC(連邦通信委員会)では、公共電波の入札(欧米では公共の財産をタダで私企業に貸し出したりしない)に際し、一部を無料インターネットサービスに開放することを義務づける、というケヴィン・マーティン委員長(共和党)の案を検討することになっている。もちろん携帯電話会社は反対している。この案は、クライナー・パーキンスなどが出資するベンチャー企業M2Zのジョン・ムレタ社長が提案するものでもある(中速のDSLのルータを購入した消費者には無料でインターネットアクセスを提供し、高速に乗り換える場合に有償とする)。M2Zは、FCCが認めれば応札するとしている。無償サービスは、もちろん広告型ビジネスモデルを前提とする。こうした政策は、おそらく次期政権のもとで実現する可能性が高い。
アメリカが最強の「無料インターネットインフラ」を持った時、それは通信が(道路のように無料が原則の)完全な公共財として認められ、ネット系サービスがさらに一段の飛躍を遂げる時だろう。
参考情報:
- Internet Policy Advice Rolls in for Obama, By Roy Mark, CIO Insight, 12/02/2008
- Is Free Internet Really on the Way?, By Reuters, CIO Insight, 12/03/2008
Topics: テクノロジーとビジネス | No Comments »