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アーサ・キットの死

By Hiroki Kamata | 2008年 12月 27日

ジャズ歌手アーサ・キット(Eartha Kitt=81)が亡くなった(1927-2008)。NTタイムズなど米国のメディアだけでなく、ザ・タイムズル・フィガロル・モンドなど、欧米の主要メディアは、60年にわたり、ステージ、ブロードウェイ、映画、TVで活躍し、半世紀以上前にオーソン・ウェルズが「最もエキサイティングな女性」と称えたこの歌手に最大級の賛辞を捧げている。それに比べて、日本の新聞の扱いの小ささはどうだろう。ほとんど見えない。

日本になじみがないわけではない。それどころか、日本の名作童謡「證誠寺狸囃子」(野口雨情作詞・中山晋平作曲)を歌ってヒットさせ、トルコ由来の歌「ウシュカ・ダラ」などもよく知られていた。筆者は、あの狸囃子の歌手が、TVシリーズ『バットマン』のキャットウーマン役で異彩を放っていたことに驚かされたものだ。シャンソンの「セ・シ・ボン」なども見事だった。何を歌っても彼女の歌になり、しかも原曲の心を伝えていた。米国では、やはりブロードウェイの業績が大きいようだ(彼女のサイトYouTubeチャンネルはこちら)。

偉大なエンターティナーで、フランスでも芸術家として遇されている彼女が、日本では「タヌキの歌のおばさん」とか「ベトナム反戦を訴えた」といった「キワモノ」や「政治活動家」扱いなのはなぜか。ジャズファンが多いこの国なのにである。思うに、やはり「狸囃子」のトラウマだと思う。占領軍(駐留軍)放送(FEN)で流れていた「狸囃子」、妙に中国風のアレンジで「マーケルナ、マケルナ♪」と巧みに歌う彼女に、敗戦コンプレックスを刺激された、という世代がいたことを覚えている。自分たちの恥ずかしい姿を思い出したのだろう。逆恨みというものは怖ろしい。ともあれ偉大な歌手だった。 (12/26/2008)

Topics: 近時片々(時論) | No Comments »

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