大不況からの早期回復は可能か?
By Hiroki Kamata | 2009年 1月 29日
「それにしても皮肉な話である。米国をはじめ、日本以外の先進諸国が必死になって日本のバブル後の経験を避けようとしている時に、当の日本はお粗末な政治のせいで、重い足取りで他国の後ろをのろのろとついて行く羽目に陥っているのだから。」
(Early In, Early Out, The Economist, 1/24/2009)
“Early In, Early Out”(早期不況入り、早期回復)と題した Economist 誌の記事の結論部分(全文の日本語はこちら)だが、政治を除けば全体のトーンはかなり楽観的。昨年後半以来の経済の急減速、いや急落は、金融恐慌の中心地をはるかに凌ぐスピード*だが、早く底に到達するのは悪いことではなく、バブル崩壊後の市場の再編過程で、経営の硬直性のために不良債権や不採算事業、いわゆるゾンビ企業の整理が進まなかったのに比べれば立派なもので、再建も早いはずではないか、という。それにつけても、とっくに寿命が尽きた自民党を中心とした「政治の劣化」だけが「早期脱出」の足を引っ張っている、と見ているわけである。
この記事へのコメントには、批判的なものが多い。すでに有効性を失ったステレオタイプ的な図式を使っている、日本の後退はかなり構造的なもので、第2次大戦後の半世紀ほど、追い風に乗っていて困難を経験したことがない世代は、何をどう変えたらよいか分からないのだ、などなど。確かに「失われた十年」とその後で、「日本的」とされていた多くのものが失われた。労働市場は、世界的に見ても異常な「流動」状態だし、「中福祉国家」などと言えないほど、社会保障も崩れてきた。退職した団塊世代の多くが年金暮らしを送れるとは、政府だって考えていない。失業率はまったく実態を反映していない。急な生産調整は、世界不況を想定していなかった輸出企業経営者の周章狼狽を示すものでしかない。
Economist の記事で興味深いのは、GDPの90%に達する日本の純債務も、借り先はすべて国内で、低金利という恵まれた条件からみて、積極財政に踏み切れない理由ではないと言っていること。国を挙げて、国内の投資(需要創造)よりも米国債を重視しているのは信じられないだろう。そもそも、国際的にみて最も奇妙なの論理が、「借金を次の世代に残す」というものだ。アメリカなどは官民そろって外国からの借金で、戦争と膨大な消費を続けたのに「世界経済を支えてきた」と評価されている。国家に継続性があれば、世代間で資産も負債も引き継ぐことになる。疲弊した経済、都市のスラムと地方の貧困、傷んだ社会基盤、減少する家庭、希望のない社会…を残さないために、国民から借金してカネを使うのは当然で、有効に使う知恵(ビジネスモデル)が生まれないのが、最大の問題だ。
経済が縮小し、税収が減る中では、政府の規模を現状で維持しようとするのは不可能で、増税を繰り返しても赤字は増大し、行政サービスは低下し、しだいに日本は投資適格性を失っていく。資金は海外に流出し、貧富の格差は固定化する。輸出による国内経済の好循環は、すでにバブルで終わっている。現在ではいくら輸出で外貨を稼いでも国内には再投資されない。市場が縮小し、購買力が低下しているから、企業は海外への投資を優先するからだ。生産性の低い産業を切り捨てれば、さらに市場は縮小する。「小さな政府」はもうだれも望まないようだが、貧困層からさらに税金で収奪するやり方は完全に限界に達している。所得再配分の機能も果たさない国家は、もはや現代の存在ではないだろう。残るは「無気力」と「無政府」しかない。
不況を早く終了するには、独自の成長モデルを世界に示す必要がある。輸出に依存するということは、他国の成長に依存するということで、Early Outには絶対にならないからだ。イノベーションは待っていても起こらない。国内市場の再構築をグローバルな視点で考える必要があるだろう。 01/29/2009)
- 昨年11月来の日本経済の現状は、すでに大不況を思わせるものがある。例えば以下を参照。「猛烈に落ち込む日本経済ー2年連続マイナス成長は不可避。数字が語る日本の未来は…」 小峰 隆夫 日経ビジネスオンライン 1月26日
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20090122/183547/
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