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英国政府のIT危機:ソフトウェアは明日の希望か昨日の呪いか?

By admin | 2009年 2月 4日

英紙 The Times は、1月末から一連の調査報道を展開し、英国政府の大規模ITプロジェクトのいくつかで、累計186億ポンド(2.3兆円以上)を超える予算超過が生じ、さらに遅延・失敗により行政に重大な支障をもたらしている、と報じた。この種の問題は(民間も含めて)一般論として伝えられることだが、個別案件の具体的事実に基づいて報道されることはまずない。関係者は「秘密」に護られているからだ。世界的にみても、今回の報道は画期的であり、事態の改善につながるきっかけとなることが期待される。

英国政府がITに使う予算は、年間160億ポンド。米国と異なり、契約は各省庁単位で行われ、プロジェクトの進捗評価を含めて詳細は秘密にされている。英国政府は、納期と予算が守られたものが、30%にすぎないことを認めている。Times と Computer Weekly の報道によれば、最大のスキャンダルは、国営医療サービス公社 (NHS)の診療記録データベースに関するプロジェクトで、3ヵ年で23億ポンドのはずが、4年の遅れを出し、コストは127億ポンドに膨れ上がっていた。NHSの政策担当者はむしろ報道を歓迎し、「コンピュータなしで診療記録管理を前提にした計画は実現できないが、肝心のソフトウェアが動かない」と述べている。

ベンダーのほうはどうか。大規模プロジェクトでは、契約できる企業は限られる。英国では、EDS(現HP傘下)、BT(英国版NTT)、富士通などだが、時には30%を超す利益を出し、時に損失を出す。NHSのプロジェクトでは、650件もの変更要求と支払いの遅延をを受けた富士通は撤退し、現在6億ポンドの支払いを求めて交渉中という。つまり、ベンダーにとってもハイリスク案件であり、儲けられるところでしっかり儲けておかないと、経営上重大な問題を生じかねない、ということだ。仕様の変更はやむを得ないものと防げるものがあるが、責任問題となると受注側にとって厳しい。

ざっと問題を整理すると、こういうことになるだろう。

  1. 政府は今後5年間で10兆ポンドをITに投資しようとしているが、規模が大きいほど、多くの基幹的プロジェクトが失敗し、予算をオーバーし、政策の実行に支障をきたす可能性が強い。
  2. 金融機関の救済などで巨額の支出増を負担しなければならない政府には、超過分を負担する余裕はますますなくなっている。
  3. 政府の役割・機能、政策実行の機動性がいちばん求められている時に、システムが動かないために出来ることもできなくなる事態が、すでに生じている。
  4. 医療、教育、雇用、生活支援、温暖化対策など、すべての政策の効率的実行はITに依存しているが、プロジェクトを確実に実行できないようでは、予算も泡と消える。

つまり、世紀の大不況から脱出できるかどうか、国としての運命がITに、つまりソフトウェアにかかっているということだ。先日、日経コンピュータ誌が社保庁のシステム問題を取り上げたが、英国の問題は日本のそれと酷似している。状況も共有している。長くなりそうだが、次回で、答はあるかどうかを考えてみたい。 (02/04/2009)

参考記事

Topics: テクノロジーとビジネス, 政治・経済・ビジネス | No Comments »

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