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240歳大英百科事典の「2.0」は Wiki に対抗できるか?

By Hiroki Kamata | 2009年 2月 6日

購読型でオンライン百科事典を提供する Britannica.com が、いよいよ殻を破って、ユーザー参加というWeb 2.0の世界に踏み出すという。百科事典ファンならずとも気になるところだ。新聞など購読型メディアの没落が続く中で、240年の歴史を誇るブリタニカの2.0がどうなるかは大きな意味を持つ。

百科事典のディレンマ

brit情報を知識や知恵に昇華させる上で、百科事典の役割はむしろ高まっている。ここでもよく使わせていただいている Wikipedia は、毎日600万のビジターを数える。長所と欠点が見事にバランスしているが、権威ある典拠とはならないので、どうしても伝統ある百科事典を利用したくなることが少なくない。しかし、こちらも長所と欠点が反転してバランスしており、最近の情報にはまったく疎い。評価が定まっていない対象ほど知りたい動機も強いわけだが、それらは存在せず、ただ達人のみが関連事項を検索して一定の輪郭を得ることができるというものとなっている。いきおい Wiki に頼る人が多くなるが、こちらは一貫性がなく、参考にはなっても典拠にはならないので、逆の意味でしろうと向きではない。

最新の情報と知識のネットワークをネット上で構築する、ということは「システム」というメタを対象とする筆者にとっても大きなテーマだが、保守本流のブリタニカをはじめとする世界の「大百科事典」が、Wiki に対してどんな回答を出すかに注目していた。購読型Webサービスを提供するブリタニカは、さきに Wikiタイプのユーザー編集を導入することを発表したが、The TimesSydney Morning Heraldの1月22日号 に、ブリタニカの Jorge Cauz (英語読みではジョージ・コーズか)社長のインタビューが出ている。

ユーザー参加と正確性の確保

コーズ社長は、今後とも「Wikipedia と競争するつもりはない」としつつも、対抗心はかなりむき出しで、Wiki対策は十分すぎるほど時間をかけてきたようだ。ユーザーの「参加」意向、記事の正確性確保の具体的手順などが検討されたという。「私たちは、Britannica に関わりたいという人々の意向が非常に強いことを知りました。編集者への手紙には、記事を改善し、誤りを摘出する具体的方法をアドバイスが提供されていました。」と語っている。今回、Wiki的な「ユーザー参加枠」を設けるに際しても、執筆者の明示と説明責任、変更履歴、分野別執筆者リスト、項目記事への質問とレーティングなどの機能を加えることで差別化を図っている。ブリタニカには、2,500~4,000人のレギュラー執筆者がいるが、今後半年余りの間に、ユーザーによる寄稿、編集のパートが設けられる。

このようなユーザー参加は、もちろん歓迎すべきことで、うまくいけば、コーズ社長が “curated knowledge database”、つまり「管理人のいる知識データベース」というビジョンに近づく。新しいブリタニカが、専門性の強い知識情報の検索エンジンなども備えたものになれば、百科事典の価値はさらに高まるだろう。

購読型と広告型というビジネスモデルの問題

ブリタニカがどうあがこうと、購読型は過去のもので、すべてのインターネット・メディアは無料になり、プロが執筆・編集する商業出版物は広告、とくに検索連動型広告と結びつかなければ生き残れない、と主張する人がいる。しかし典拠性を重視する読者には、広告は好みではないだろう。新聞や雑誌ともども、出版物の多様性を守るためにも、購読型に生き残ってもらいたい。広告とコンテンツの結びつきが強くなることは、執筆・編集の独立性という、情報が知識となるための根本を浸食し、クズが多くなることを意味すると思うからだ。

Wikipedia の600万に対して、Britannica.com は150万のビジターがあるということは、有料であることを考えれば、たいした数字で、低価格化によって拡大することも可能だろう。また、(たぶんブリタニカはしないだろうが)たとえば無料を望むユーザーに、広告付きでコンテンツへのアクセスを認めたりするサービスモデルもあるかもしれない。ユーザーも広告も多種多様であり、硬直的に考えなくてもいいと思う。要は、選択と集中では、環境の変化に対応できないということだ。  (01/06/2009)

参考情報

Britannica 2.0 shows Wikipedia how it’s done, by Claire Sweeney, Times Online, 1/22/2009

Watch out Wikipedia, here comes Britannica 2.0, by Stephen Hutcheon, Sydney Morning Herald, 1/22/2009

「ブリタニカ、オンライン百科事典のユーザー編集を可能に」、CNET、1/23/2009

「ブリタニカ百科事典オンライン版、利用者による記事編集が可能に」 AFP、1/23/2009

「ブリタニカCEO、『Wikipediaが頻繁に上位に表示される』とGoogleを非難」、SEMリサーチ、1/24/2009

Topics: テクノロジーとビジネス, 電子ブック | No Comments »

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