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変わるゲーム開発の現場:日本は追いつけるか

By Hiroki Kamata | 2009年 2月 8日

ゲームジャーナリストの新 清士氏が、3月にサンフランシスコで開催される Game Developers Conference (GDC) の先読み記事を、日経のIT+PLUS に書いている (1) (2) 。欧米のビジネスカンファレンスは、明確にその年の焦点を設定しているが、事前に日本人エキスパートによる動向分析が読めるのはありがたい(ゲームでもなければ、まず考えられない)。同氏のレポートによれば、「テクニカルアーティスト」や「レベルデザイナー」という新職種の登場、スクリプト言語の活用によって、大規模化しつつあるゲーム開発の生産性が欧米で進化を遂げているという。

スキルとツールの再構成に始まるイノベーション

「テクニカルアーティスト」の役割について、日本では混乱もあるようだが、欧米では過去5年ほどの間に認知されるようになったという。グラフィック職を支援するハイレベルプログラマーで、開発技術の選定、データフロー/開発フローの設計を行う職種であるという。グラフィック開発専門のITスペシャリストである。CG映画制作における「テクニカルディレクター」のように、アートとコードの間のギャップを埋める橋渡し役が期待されている。ビジネスコンサルタントとIT開発チームの間を橋渡しする「ITアーキテクト」と同じようなものだ。他方、「レベルデザイナー」というのは、「ゲーム内空間での物の配置や面構成を設計する役職」だが、最近では「演出まで含めたその面(レベル)の『ユーザー経験』自体を設計する職能」として役割が拡大しているそうだ。

日本では「プランナー職」と「グラフィック職」に分かれているが、こうした新職種の導入は一部を除いて遅れているという。もちろん、開発が大掛かりになるほど、新しい技術専門職の必要が大きくなる。しかし、専門職が育つには、まずチームの中でパイオニア的な人間が出て、彼らのスキルを生かす形で開発プロセスを大胆に変えていく必要がある。前向きなチームコミュニケーションとその環境があればいいが、プロセス全体に影響することなので、リーダーが採用しないと動かない。つまり日本では難しいということなのだろう。これはゲームに限った話ではない。

ゲームのスクリプト言語としては、Lua Python が普及しており、こうした汎用スクリプト言語をカスタマイズしたものが使われているらしい。スクリプト言語のメリットは、もちろんインタラクティブな開発が自由にできるようになることで、上述したレベルデザイナーなどは、これを使って大いに生産性を高められる。数年前までは実行速度がネックになっていたが、ハードのパワーアップで状況は一変した。スクリプト言語は、日本の「グラフィック職」にとっても便利な道具だが、カスタマイズなど開発環境の整備を含めて考えると、技術系の新職種のサポートが不可欠だろう。さもないと欧米とは競争にならない、と思われる。

「お家芸」の崩壊パターン

言うまでもなく、ゲームは日本の「お家芸」だった。「だった」というのは、最近では欧米の躍進が著しく、ソフトウェアに関しては、日本は後塵を拝するような格好になりつつあるからだ。危機的な(たぶんまだ間に合う)状況にあるのだが、世間に遍在する「お家芸」意識が障害になって、業界全体としての組織的な対策が遅れている。メディアなどは、アニメなどと同様、ゲームをもっぱら「コンテンツ」と考えていて、日本人の職人芸が世界を制し、あとは「著作権ビジネス」だけやっていればなどと甘く考えているふしがある。

「ゼロ戦」から「半導体」まで、日本の「お家芸」がコケるパターンは共通していて、最初の成功に酔い、ライバルが絶対に追い付けないと思い込み、いったん負け始めるとますます精神主義に閉じこもる、というものだ。ライバルは、技術と戦術のトレンドを読み、強みと弱みを分析し、トライアンドエラーで改善するという「後発型エンジニアリング」をセオリー通りにやっているだけなのだが、勝つやり方を確立するまで、開発プロセスや役割分担、スタッフのスキル管理などを変えていける強みが、最後に圧倒的な差となってしまうのだ。イノベーションは、変えられる側の味方である。  (02/08/2009)

参照記事

「テクニカルアーティスト」というゲーム開発の新職種 GDCを読む(1)
「スクリプト」で差がついた日米ゲーム開発の生産性 GDCを読む(2)
「新清士のゲームスクランブル」 日経 IT+PLUS 1/30, 2/6

Topics: テクノロジーとビジネス | No Comments »

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