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プラットフォーム化する電子ブックリーダー:アマゾン「キンドル2」

By Hiroki Kamata | 2009年 2月 11日

アマゾンが2月9日、通信機能付電子ブックリーダーのニューモデル「キンドル2 (Amazon Kindle 2)」を発表した。デザインが洗練され、読み上げなどの機能が追加されてパワーアップ。またスティーブン・キングがわざわざ新作を提供した。日本のメディアでは「キンドル2」の扱いは小さく、欧米とは対照的だ。日本語版がまだないことを除いても、これはまずいと思う。アップルの iPod、Googleの Android 携帯向けサービスも含め、電子ブック市場の有力な一角を占めることは間違いないのだから。

電子ブック・ビジネスの方程式kindlecomp

新しいコンセプトのデバイスを世に問うには、操作性を含めたデザインが決定的に重要であることは、アップルの例を出すまでもない。07年11月に出た初代「キンドル」はもろに「機械」だった。それでも、昨年中に50万台を達成、コンテンツも23万冊分を提供したのはすごい。アナリストによれば、2008年のデバイスと電子ブックの売上げは、合計して1億5,300万ドル、2010年には12億ドルに上るという。台数は iPod の2年目よりもよい数字で、高いハードルをクリアして21世紀の有力なメディアデバイスとしての地位を築きつつある。

電子ブックリーダーというデバイスが定着しうるかどうかを考える時には、音楽コンテンツなどと同じく、以下のの3つの次元の要素の組合せとして、ユーザーに提供できるユニークな価値を検討するのがよいと思う。アップルは、この3変数の多項式のような問題を見事に解決してみせたことになる。

  1. 製品デザイン(ハード/ソフト/GUI)
  2. コンテンツ(著作権/データ形式)
  3. ビジネスモデル(課金/オープン性/ディストリビューション)

電子ブックそのものは、既存の情報通信デバイスおよびサービスの中で考える必要がある。携帯やパソコン、PDAは汎用のリーダーであって、つねに専用デバイスと競合関係にある。また、日本で成功した電子辞書も専用リーダーである。デバイスとして成功したら、それはプラットフォームとしての性質を持つ。iPod は音楽プレーヤーであるばかりでなく、教育・ビジネスメディアでもある。つまり、汎用のリーダーと同じように、コンテンツから独立した存在にもなるということだ。アマゾンで言えば、キンドルは「通販カタログ」にも、大学の「ラーニングデバイス」にもなりうる。だから、ビジネスモデルも柔軟に考えることが可能だし、またそれが必要でもある。

「コンテクスト」こそプラットフォーム:日本はなぜ敗れるか

電子書籍/電子ブックは、ほとんど日本の創始といってもいいほどだが、最近の「シグマブック」(パナソニック)や「リブリエ」(ソニー)に至るまで、20年以上の失敗の歴史がある。いずれも、ハードベンダー主導で生まれ、「出版」「通信」という高い壁を超えられずに挫折した。これらと米国のビジネスモデルはどこが違うか。それは、ハードウェアからもコンテンツからも独立したWeb 上のセマンティクス=コンテクスト(簡単に言うと 5W1H 情報のデータベース)をプラットフォームにしている点だ。

アマゾンのキンドルは、もともと紙の書籍の流通から出発し、出版社にとって巨大な存在に成長してから、電子コンテンツに進出し、それを配布する手段としてキンドルを開発した。つまり、デバイス主導でもコンテンツ主導でもなく、コンテクスト主導ということだ。アップルの iPod は、デバイス主導のように見えているが、これもインターネット(iTunes/iTunesStore)と表裏一体であり、さらに他のアップル製品(Mac/iPhone)と協調して、魅力的なコンテンツを吸着する独自のメディア空間を構成している。これらに挑む Google の戦略も、Android をベースに、ウェブ空間でこれまで銀河のように形成してきた多種多様なコンテクストとコンテンツの複合をプラットフォーム化するという点で、ユニークなものだ。

3社のビジネスモデルは、出発点やバイアスの違いはあっても、デバイスやコンテンツには依存していない。むしろそれらに依らしめるほど強力な磁力を持つコンテクストを提供する。ハードウェアが圧倒的だった時代が終わり、これからは「コンテンツの時代」だと言われたが、コンテンツはコンテクストによって相対化される。つまり何が誰にとってコンテンツとしての価値を持つのかという、コンテクストを握る企業がネット時代の覇者となるのだ。このことを筆者は言い続けているのだが、いまだに日本では異端である。どうも日本人が考えたくない領域の現実であるらしい。しかし、ここに気づかなければ、ネットビジネスの成功はほとんどあり得ないだろう。 (02/11/2009)

参考情報:

日本語では TechCrunch の以下記事が詳しい。

Topics: テクノロジーとビジネス, 電子ブック | 1 Comment »

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One Response to “プラットフォーム化する電子ブックリーダー:アマゾン「キンドル2」”

  1. キングのホラーより怖い:「出版」ビジネスモデルを解体する電子ブック | INTELOGUE さんより:
    2009年 2月 26日 at 4:09 AM

    [...] プラットフォーム化する電子ブックリーダー:アマゾン「キンドル2」、INTELOGUE、2/11/2009 [...]

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