“Dolce Vita” :中川・麻生コンビの「酒とイバラの日々」
By Hiroki Kamata | 2009年 2月 20日
G7の会場となったローマのエクセルシオール・ホテルは、フェリーニの映画『甘い生活』の舞台でもある。この作品は、約3時間近くにわたるオチのないストーリーのために「上流階級の退廃的世界を描いた」とか「難解」とか評されるが、人生(世界)はもともと説明不可能なものだと考えれば、まったく現実をナチュラルに描いた偉大な作品である。中川大臣の辞任劇も然り。必然とも偶然とも、また陰謀とも自滅とも解釈可能だが、”C’est la vie” というしかない。
日本の政治家の行動が、これほど各国のメディア、あるいはネットの注目を浴びたことは、かつてなかったほどだ(とくにYouTubeでは)。概して厳しいが、古今の政治家と酒にまつわるエピソードを特集したりしているのもあって面白い。近年では、ワシントンのアンドリュース空軍基地に国賓として到着するやいなや、居並ぶ出迎えの人々をよそに長々と放尿したロシアのボリス・エリツィン氏以来ともいえる。
筆者は父が一時期アル中に近かったせいもあって、中川氏のような人物にはつい身近に感じてしまう。依存症というのは、れっきとした病気なのだ。本人や任命権者の責任を別として、今回のことでは、つい本人以外の人々の行動を考えてしまう。自分の家族が、友人が、上司が、社長が…あのような状態にあったら、どうするつもりなのか、と。
日本政府代表団:今回のような公式ミッションでは、チームとしての行動が求められることは
言うまでもない。スタッフには、トップをあらゆる誘惑や危険から護ること、体調をチェックし、任務の遂行が可能に保つよう行動することが要求されるのは当然であるし、万一、達成困難と判断すれば、本国に連絡をして緊急対応をとらねばならない。それが国益であるし、彼らはそのために給料をもらっているのだ。ついて行くのが仕事ではない。それが、どうだろう…。ツァコンダクターだって、もうすこしまともな対応を取る。今回のチームは最悪だった。飲酒がどうのという以前の問題で、きちんと落とし前をつけていただきたい。
同行取材記者団:新聞やTVの記者が、これもぞろぞろ(毎日新聞記者は呼ばれなかったようだが)付いて行って、高級ホテルで大臣に御馳走になり(飲酒運転の幇助のようなものか)、記者会見ではろくに質問もしない(できない理由も知っている)。事情を知っているのに事実に即した記事も書かない(書けるわけもない)。これで仕事になっているのか? この連中は、向こうで何人にインタビューし、何本の記事を書いたのか。まったく大臣と同罪だ。いや『甘い生活』のパパラッチのようなプロ意識もなく、ただ呆れたり、笑ったりしていたのだとすれば、泥酔していない分、大臣より罪は重いと言わざるを得ない。The Times のレオ・ルイス氏は東京から、「政治家と記者は同罪」と書いている (2/17)。
国が衰退する時には、こういうことが起こるものか。すべては人々の心の中で始まる。「社会」を成り立たせている絆が切れ、多くの人が自分の職業(的使命)も忘れ、家族や他人や会社や国の運命に関心を失い、ただその日を過ごしている。報道によれば、麻生総理は目に涙を浮かべていたという。胸の悪くなるような事件の中で、唯一の救いだと思う。社会を再建するのは、まずこうした「情」ではないかと思う。「信なくんば立たず」よりは「人にして不仁ならば」あたりから始めるしかないのでは。 (02/19/2009)
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