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UIは偉大なり!:iPhone とキンドル 成功の秘密

By Hiroki Kamata | 2009年 3月 11日

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週末、iPhone と Kindle (1)という2つのヒット商品を見る機会を得た。ユーザーインタフェース(UI)が大きな意味を持つ装置は、触ってみないと分からないことが多い。かつて日本はこの種のガジェットで圧倒的に強かったのだが、最近は不振が続く。その理由は、装置を超える「システム」を構想できていないこと、そしてUI関連のソフトウェアの重要性に気づいていないことだと考えていたが、改めて実感した。と思っていたら、英紙 Guardian 3月8日のコラムでジョン・ノートン記者が、とても的確にまとめていた(「アマゾンのキンドルはいかにITを本に持ち込んだか?」)。 

ブレイクスルーは意外なところからやって来る

ノートン記者は、鍵を落とした酔っぱらいが、見当違いの場所を探しまわる笑い話を譬えに、技術予測について、人々は酔っ払いと同じで、見当違いのところを探したあげく、簡単にダメという結論を出してしまう、と言う。iPhone が登場するまでは、モバイル用の大型ポータブルスクリーンが実用化されない限り、インターネットブラウジングは一般化しないと見られていた。しかし、 iPhone は指先で画面をなでて文字サイズを自在に操作し、あるいは振動加速計で方向を感知して表示方向を変えることで、小画面でもブラウザ表示を自然に読めるようにした。ソリューションはハードではなくUIソフトだったのだ。

同様のことが電子ブックリーダーについても言える。これも表示がすべてだと考えられていた。小さいマーケットでソニーが市場の大半を占めていたが、アマゾンのアプローチはソニーをしのぐハードウェアではなく、無線常時接続でいつでも専用のストアからコンテンツをダウンロード可能にすることだった。通信料金はデバイスの価格に含まれているから、ユーザーはそっちの心配をしなくていい。もちろん、本の電子化はアマゾンの本来の領域の延長だから、他の追随を許さない。結局、電子ブックのキーテクノロジーは、ネットワークへのアクセスだった。これは iPod という先例があるとは言え、人々は電子ブックを装置として考え、ネットを使ったユーザビリティや価格という価値を見落としていたからだ。記事の内容をまとめるとそうなる。

価値を実現するインタフェースデザインと日本の「ものづくり」の運命

電子ブックはまだ進化の余地は大きいが、無線インターネットを前提としたユーザーインタフェースは、電子インクなどの道具以上に外せないものだろう。電子ブックリーダの価値は、携帯性のほかには、コンテンツの入手性と価格、辞書との連動、検索などの拡張機能だ。それはUIデザインによって生きも死にもする。当たり前かもしれないが、UIには一種の「習慣性と依存性」がある。アップルが「世俗的宗教」と言われる所以である。ユーザーならぬ「信者」を相手にすると、他メーカーに勝ち目はない。こうしてUIが製品としての成功と失敗を分けるとすれば、製品の価値に占めるハード/ソフト/UIの比率は、実質的にすでに1対2対3くらいになっているかもしれない。

もうひとつ。日本の「ものづくり」は、これまでユーザーが製品と1対1の関係を持てるものでは強かった。性能、機能、品質、サービスのセットがそれを支えた。しかし、モバイルや電子ブックは製品で完結するものではなく、ネットとデバイスとユーザーの3者の関係があり、しかもネットの向こうには「社会・世界」があるという多層的な関係を背景にしている。そうした関係から引き出せる(商業的/非商業的、明示的/非明示的)価値はUIに依存する。機能やサービスが複雑になり、そこから引き出すべき価値が複雑になるほど、UIの重要性は増していくということだ。UIは偉大なり! ソフトウェア原理主義者の筆者としては、UIもソフトウェアではと言いたい気もするが、しかしそこからはみ出た「人間的=価値的」部分がUIのUIたるところなので、共にモデルを使って協調できるように仲良くやりましょう、と言うほかない。

ところで、UIで負け組に落ちている日本の「ものづくり」をなんとかするにはどうするか? 結論としては、「価値」に敏感にならないとだめだということだ。画一的な価値観からは画一的な発想しか生まれない。それでは差別化できず、ガラパゴスの海に沈んでしまう。価値は絶対的なものではなく、相対的なものだからダイナミックに動く。昨日は誰も気にしなかった「グリーン」に、今日は大騒ぎする。しかしグリーンをどうやって可視化するか。UIを通じてだ。グリーンがほかの要素(コストなど)と複雑なトレードオフの関係にあるとすれば、最適な(あるいは最低限度の)グリーンをどうやって調節するか。UIを通じてだ。UIの設計者は、「グリーン」をめぐる諸関係とユーザーの価値観、プライオリティを知っていなければ、よい製品はできない。

価値観は多様化したように言われているが、日本で半世紀以上生きてきた筆者には、その逆であるように思われる。バブル崩壊以後はますます内向きになり、画一化しているようだ。そこから抜け出して世界に冠たる製品やサービスを創造できるか、それとも素材に徹するか、2つの道しかないと思えるのだ。 (03/10/2009)

Topics: デザイン, 電子ブック | No Comments »

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