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インフルエンザ「依存症」の治療:日米のハードリセット!

By Hiroki Kamata | 2009年 5月 22日

jvroosこの国の人は、考える暇を惜しんで働いてきたために、(よくよく考えないと)働いても結果が保証されないような事態には慣れていないのだろう。マスコミは、大不況に突入して以来、ますます考えずに「過剰同調」するパターンを拡大させている。日本だけの「ミサイル危機」に続く豚インフルエンザ(国際的にはまだこの呼び方が多い)は、連日の「危機報道」を繰り返すことで過剰反応が社会に伝染し、一種「インフルエンザ依存症」とでも言えそうな状況を生んでいる。当然のことながら感染は拡大し、社会生活に打撃を与え、それが「二次被害」を拡大させ、ニュースをつくり出す、というしくみだ。報道関係者は当分考える苦痛から免れられる。 

インフル狂想の向こうで世界は動く

先週会った米国の友人が、日本の狂騒を「クレイジーだ」と言っていた。5,000人を超す感染者を出した国から来て、泰然としている。「毎年のインフルエンザで何人死んでいるか知ってるかい?」と聞かれたので「7、8千人くらいか」と言ったら、「1万5千人だよ」と訂正してくれた。日本でも多い年はそのくらいあるらしい。まあ、数で言えば、日本は年間3万人の自殺者を出す国だ。日に100人に近い人が自ら命を絶っている。原因の多くは経済的な問題であり、伝染病よりは対策は容易だろう、そもそも世界的に見て異常な社会的病理現象だ。弱毒性インフルエンザと経済危機を比べれば、経済のほうが火急の問題だと考えたい。GDPが年率15%ものマイナスを記録したと言うのに、TVでは(「金融危機」まではよくやった)専門家の討論すらやらず、インフルを繰り返す。ネットでは「政治から目を逸らす陰謀」説もさかんだが、筆者はマスコミも人の子で「考えるのが嫌なだけ」と考えることにしている。悪人に必要な知性が感じられないからだ。

マスコミが頭からインフルエンザに罹っている間に、世界は動いている。米国のガイトナー財務長官が北京に出かけ、異色の新大使が内定し、オバマ政権の米中戦略対話路線の形が見え始めた。すでにブッシュ政権の後期から、日米同盟派の不快と不安をよそに「戦略対話」の基盤が構築されてきたが、それを受け継ぎつつ独自色を加えることになるだろう。その独自色の部分に「日本」が入る。

ルース新駐日大使人事を読む:政治任命のウラ

そんなことを考えていたら、米国の新駐日大使に、シリコンバレーの辣腕弁護士でオバマ大統領の選挙スタッフ、ジョン・ルース氏 (John V. Roos)が内定した。日本では“ソフトパワー”のナイ・ハーバード大学教授が内定していると単純に伝えられていたので、これはすこし驚いた(インテリジェンスの欠陥が暴露されている)。日本では、期待の「大物」でなく、無名の「政治任用」であったことを不快に思う空気もあるようだ。しかし報道・分析はほとんどない。直前に中国大使に内定した共和党若手のホープ、ジョン・ハンツマン・ユタ州知事と合わせて、オバマ政権のアジア(世界)戦略を窺わせる人事なのに。ではどう読むか。今回はまず「意図」を考える。

まず、大使の任命はその国のやり方があり、日本はほぼ外務官僚のものだが、米国ではほぼ政治任用のポストとなっている。それも「大統領の友人」というのが基本だ。ロンドン、パリ、ローマの駐在大使は、誰もが羨む楽しいポスト。大使ポスト目当てに大統領候補者の選挙資金を集める連中を、アメリカ人は否定しない。だって当然でしょ。そのかわり、大使は外交の実務をやらない。国務省にもホワイトハウスにも、専任スタッフがいる。ネゴシエーターとしての大使が重要になるのは、むしろ同盟国ではない、気を遣う必要のある国の場合だ。中国やイラクは、相当にタフで柔軟・機敏な頭脳の持ち主を必要とする。ハンツマン知事は、化学品メーカーの御曹司ながら、ドロップアウトして自分の「中国体験」を持っている。かつてのパパ・ブッシュ特命全権公使(米中連絡事務所長)以来の実力者だ(中国人は胆力のある人物でないと交渉相手にしない)。

他方のルース氏も、弁護士としてトップレベルの実力者であることは(ランキングから)確かだが、外交は未経験、外国経験もイスラエルのみ。外国語も出来ないときている。最後の仕事にするには若いので、(ヒラリー長官の国務省ではなく)オバマが望み、本人が希望したミッションがあるとみるべきだろう。「知日派」を条件にしなかったのは、ネゴシエーターだということだ。前任の好々爺、シーファー大使のようなわけにはいかない。「実務的かつ率直」な交渉を求めることになるだろう。国務省には日本専門家がおり、彼らは日本の駐米大使と対応している。その交渉では埒があかないと考えた外交スタッフ(国家安全保障会議)が、今回の人事を望んだのだろう。日本は気の置けない「同盟国」ではなく「戦略対話」の相手でもない。その中間なのだ。

思えば、申し分のない「大物」であったハワード・ベーカー元大使のこの言葉だ(拙稿参照)。「日本と米国の関係は大地に根を下ろし成熟しつつあるのだから「政治的な『大物』を大使に起用するという方法でこの関係を強化する必要はもうない」と、彼は述べていた。たしかにルース「大使」は大物ではないが、さりとて東京がロンドンやパリのような華やかな「舞台」になったのではないと思う。弁護士は何より時間を惜しむ。彼のカバンにはすでにプライオリティ付きのリストがあるだろう。北京のハンツマン氏ともしばしば連携をとることになるだろう。日本に時間を使わせることは極力さけようとするだろう。「同盟」の遠慮や無遠慮はなく、単刀直入に議題に入る。たぶん。

日本の政権の行方は混沌としているが、官邸も外務省も、現在の野党も、米国のアジア戦略のフレームワーク、日本に対して提起してくるイシューと期待する解答を、不変の「日米同盟」という思考停止からハードリセットして、早急に検討しておく必要があるだろう。 (05/21/2009)

米・オバマ政権、新駐日大使に弁護士のジョン・ルース氏を指名する方針固める」フジTV、5/20

Topics: 今日のひと言, 政治・経済・ビジネス | No Comments »

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