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懲役150年と375年:金融詐欺は何を裁き、何を守るか?

By Hiroki Kamata | 2009年 6月 22日

史上最大の金融詐欺事件、ポンジーのマドフとピラミッド(ネズミ講)のスタンフォード両被告がそれぞれ訴追され、判決を待つ段階となった。“5兆円男”マドフ被告が最高刑150年に対して、”サー”アレン被告は同じく375年だ。この違い(?)はどこからくるか、といえば、スタンフォード被告のほうが、被害額 (70億ドル)のわりに手が込んでいて (併合罪)、組織的で、国境を超え、被害者が多い (5,000人以上)、ということらしい。

対照的な二人:団塊の夢に生きたスタンフォードと手堅い金融人マドフ

日本はこうした事実上の「絶対的終身刑」がないどころか、詐欺罪の最高刑は10年にすぎない。刑務所での待遇、居住環境など、様々な要素があるので、単純に比較はできないが、刑期をとってみれば、おそろしく軽い。「死刑存続」に拘ったり、飲酒交通事故に懲役20年を科したりするわりに詐欺の法定刑が軽いのは、おそらく被害者の「欲」や「自己責任」を勘案してのことだろう。米国の価値観はこれと大いに異なる。詐欺を一律に扱ったりしない。金融の場合は、市場という資本主義の根幹をなす「社会の公器」を悪用して「投資家」と規制当局を欺いたことを重視する。いわば市場の信頼と機能に巨大な損害を与えた「資本主義に対する犯罪」なので、100年以上も当然だということになる。日本の刑法が欧米と著しく異なるのは、何を守るのか、という価値観の問題だろう。

マドフとスタンフォードは、どこまでも対照的だった。元NASDAQ会長の老ユダヤ人、マドフのほうは、すでにB級映画にもなっているが、団塊のテキサス人・スタンフォードは、世界を股にかけ、クリケット、ヨット、ポロなどの金持ちスポーツに投資し、英国のチャールズ皇太子をはじめ多くの有名人を巻き込んだ、という点でも、“禁欲的”で家族思いのマドフとは大違いだ。スタンフォード大学創立者の子孫を名乗り、あちこちに豪邸を持ち、女性への関心も持ち続けている(最近はウェイトレス出身の女性と婚約中)。つまり人生を楽しみ、集めた金を有効(?)に消費していた。法廷では非常に「神妙」である由。

業界での堂々たるキャリアがあるマドフは、比較的少数のファンドやセレブからカネを集め、より本物の“詐欺師”的なスタンフォードは、「中流の夢」を体現することで、幅広い小金持ちから集めたということなのだろう。マドフの被害者はユダヤ人富豪に偏り、そのために「ヒトラー以来、最も多くの金をユダヤ人から巻き上げた男」と称されている。

さて、この対照的な二人だが、もしかすると先の運命も対照的なものとなるかもしれない。マドフが収監されない可能性があるからだ。当局の判断次第では、行方不明の資金の回収に協力する代わりに、刑務所行きを免れるかもしれない。額があまりに大きいために、1割でも2割でも回収できれば、余命いくらもない老人に重罰を科すよりは…という選択肢も合理性がある。そこまで考えていたとすれば、さすが金融のプロだ、ということになろう。 (06/21/2009)

参考:

Billionaire Stanford faces 375-year sentence after pyramid scam arrest, James Bone, Tim Reid, Matt Spence, The Times 6/20/2009

Topics: HOT:マドフ金融詐欺事件, 政治・経済・ビジネス | No Comments »

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